「小春日和」は春に使う言葉ではない

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 暖かく穏やかな晴天のことを「小春日和」と言う。「春」と付くが、この言葉は2月や3月ごろの春の始まりの時期に使う言葉ではない。

 「小春」は、旧暦10月、いまの11月から12月上旬ごろの別称。中国・荊楚の年中行事を記した『荊楚歳時記』に「十月、天気和暖にして春に似たり、故に小春といふ」と載っている。荊楚の旧暦10月は温暖で、春のような陽気だった。

 日本には10世紀までに伝わったと考えられ、14世紀にまとめられた『徒然草』第155段には「春はやがて夏の気を催し、夏より既に秋は通ひ、秋は即ち寒くなり、十月は小春の天気、草も青くなり、梅も蕾みぬ」と記されている。