トランプの絵札にはモデルがいる

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 トランプの絵札に描かれている人物には、それぞれ元となったモデルがいる。

 現在日本でよく見られるトランプの原型は、15世紀後半にフランスで生まれた。日本のキング、クイーン、ジャックに当たるカードは、「王」「女王」「従者」を意味するフランス語からRoi、Dame、Valetと呼ばれ、いずれもスペード、ハート、ダイヤ、クラブの4種類、計12枚ある。フランスではそれぞれの絵札に、実在または伝説上の人物が当てはめられた。対応する人物は様々だったが、16世紀後半には統一されたといわれる。

 一般的なフランス・パリのものでは、Roi(キング)はいずれも実在する王がモデルとなっている。それぞれ、スペードは古代イスラエル国王のダビデ、ハートはフランク王国国王のシャルル1世、ダイヤはローマ帝国皇帝のジュリアス・シーザー、クラブはマケドニア国王のアレクサンダーとされる。

 他方、Dame(クイーン)はそれぞれ、スペードはギリシャ神話に登場するトリトンの娘のパラス、ハートは『旧約聖書』の外典『ユディト記』に登場する女戦士のユディト、ダイヤは『旧約聖書』に登場するヤコブの妻のラケル、クラブはシャルル7世の妻のマリー・ダンジュー。

 Valet(ジャック)はそれぞれ、スペードはシャルル1世の騎士のオジェ・ル・ダノワ、ハートはジャンヌ・ダルクの戦友のラ・イル、ダイヤはギリシア神話に登場するトロイの第一王子のヘクトール、クラブは『中世騎士物語』に登場する騎士のランスロットがモデルとされる。

 ちなみに、マークはそれぞれ、スペードは剣、ハートは杯、ダイヤは金貨、クラブはこん棒に由来する。