CDの最大収録時間が74分なのは『第九』が収まるようにするため

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 CDの最大収録時間74分は、ベートーヴェンの『交響曲第9番』の長さを参考に決められた。

 SONYは1979年、オランダのフィリップス社との共同開発でCDの開発を始めた。CDの規格を決める際、フィリップス社は直径11.5cmを推していたが、SONYは12cmを推していた。

 フィリップス社が推していた11.5cmはオーディオカセットの対角線の長さと同じで、ドイツの工業品標準規格(DIN規格)に合う。11.5cmは60分の音楽が収まる大きさだ。

 一方、当時SONYの副社長であった大賀典雄さんは、親交のあった指揮者のヘルベルト・フォン・カラヤンの助言をもとに「オペラの幕が途中で切れてはだめだ。ベートーベンの『第九』も入らなくては。ユーザーから見て合理性のあるメディアにしなくては意味がない」と主張。バイロイト音楽祭でフルトヴェングラー指揮のもと行われた通称「バイロイトの第九」の演奏時間を参考に、74分42秒の音楽が収まる12cmが望ましいとした。SONYによれば、クラシック音楽は95%以上が75分で、この大きさならほとんどの曲が収まるという。

 提案を受けフィリップス社は「12cmでは上着のポケットにも入らないではないか」と反論。SONYは日本、アメリカ、ヨーロッパの上着のポケットのサイズを調べてみたが、14cmを下回るポケットはなく問題なかった。最終的にSONYの主張が通り、最大演奏時間74分42秒、直径も12cmに決まった。この際、サンプリング周波数44.1kz、量子化ビット数16ビットもSONYの提案通りの数字となった。