ベートーヴェンのピアノ曲『エリーゼのために』のタイトルはもともと、『テレーゼのために』だった。
同曲は、ベートーヴェンが愛した、テレーゼ・フォン・マルファッティに贈られたとされる。
テレーゼは、ベートーヴェンの主治医の姪で、ベートーヴェンからピアノを教わっていた。1810年、ベートーヴェンは当時39歳、テレーゼは当時18歳のときだった。ベートーヴェンはいつしかテレーゼのことを好きになり、結婚のために洗礼証明書を取り寄せて、プロポーズした。だが、ベートーヴェンは振られてしまった。
失恋したベートーヴェンは、テレーゼのことを想い、同曲を作曲した。だが、発表されたとき、楽譜に書いてあった直筆の字が汚く、「テレーゼ(Therese)」の部分が「エリーゼ(Elise)」として広まってしまったとされる。
余談だが、ベートーヴェンの『ピアノソナタ第24番』は、ベートーヴェンが生涯唯一婚約したテレーゼ・フォン・ブルンスヴィックに献呈されたことから、『テレーゼ』という副題が付けられている。偶然にも同じテレーゼという名前だが別人。こちらのテレーゼとは、1806年に婚約、1810年に破談している。
『ピアノソナタ第24番』が作曲されたのは1809年。『エリーゼ(テレーゼ)のために』はその1年後に作曲された。