「母」は昔「パパ」と呼ばれていた

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 有名ななぞなぞに「母にプレゼントすると一瞬のうちに男性になってしまう不思議な記号ってなーんだ?」というものがある。答えは「半濁点(゜)」。だが、奈良時代まではプレゼントするまでもなく、母は「パパ」と呼ばれていた。

 奈良時代まで「はひふへほ」は、現代の「パピプペポ」の音で発音されていた。ゆえに、母(はは)は「パパ」となる。

 そもそも父母のことを「パパ」「ママ」と呼ぶのは、「パ」「マ」の音が幼児にとって発音しやすいからだ。閉じた唇を開いて息を出せば自然に発音できる。対して「ハ」の音は発音しづらく、外国人の中でも「ハヒフヘホ」の音に苦労するという人は多い。

 なぜ「パ」が「ハ」の音に変わっていったのか。その理由には、口を閉じるのを怠るようになったからなど諸説あるが、変化する途中、江戸時代頃までの「はひふへほ」の発音は、口を閉じるのを少し緩ませた「ファフィフフェフォ」だったとされる。

 なぞなぞといえば、室町時代の雅楽書『体源抄』にこんな問題が載っている。「母ニハ二度アフテ、父ニハ一度モアハズ」。「母には2度あうのに、父には一度もあわないものってなーんだ?」という意味である。ちなみに答えは「唇」。父(ちち)を発音するときは一度も唇を合わせないからだ。このことからも、「は」は口を閉じて発音されていたことがわかる。