「お内裏さまとお雛さま」は2人ではなく3人いる

|No.171

 「あかりをつけましょぼんぼりに」で始まる童謡『うれしいひなまつり』では、2番で「お内裏さまとお雛さま」と歌われている。だが、この歌詞を正確に考えると、「2人並んですまし顔」ではなくなる。

 お内裏さまとは、男雛だけのことではなく、雛人形の一段目に並ぶ男雛と女雛の2人のことを指す。ゆえに、「お内裏さまとお雛さま」と言ってしまうと、2人ではなく、男雛1人と女雛2人の、計3人並んですまし顔をしていることになってしまうのだ。

 一方、3番の歌詞にある「少し白酒召されたか 赤いお顔の右大臣」も誤り。歌詞の意図する2人は左大臣と右大臣ではなく、御殿を守る随身。左大臣と右大臣であれば、五人囃子よりも上の位で、上の段にいるはずである。また、白酒を飲んで酔っ払ったとしたら大失態で、実際にはただ血色が良かっただけだと考えられている。

 さらに、「赤いお顔」なのは左随身。歌詞に従うならば右大臣ではなく左大臣である。一段目から見下ろしたとき左にいるからだ。

 様々な間違いがある歌詞だが、これらの間違いを誰よりも気にしていたのは、作曲したサトウハチローだ。曲が広まるにつれ、誤解が流布されていく状況にサトウは後悔。サトウの家ではこの曲の話はタブーとされていたという。